何故、彼は離職するのか? その2 ~この求人難では、今の社員を引き留めることが最重要~
平成30年12月からRKKテレビで放映中の下町ロケット佃製作所は、農業用トラクタの自動運転に取り組んでいます。
・殿村農園にトラクタの試験圃場を申し込んで一旦は断られました。しかし、トラクタの試験運転は、高齢化した日本の農業を救うという大きな目的があること訴えました。すると、逆に殿村農園から是非使ってくださいとお願いされたのです。
・佃製作所は、トラクタ用のエンジンとトランスミッション(変速機)の開発に社員全員の力を結集します。社長は徹夜を厭わずトランスミッションの不具合の原因追及を行う社員とともに、社長室でその解決をじっと待ちます。 不具合はギアそのもにあったのではなくて、シャフトとギアの軸受方法にあったのでした。内製化をめざす帝国重工とのエンジン性能試験に優った佃製作所は、更に一体化することになります。
これらは物語で、現実はこううまくはいかないでしょうが、経営方針が大事なこと、社員が一体になり協力することの大切さを学ぶことができます。
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さて、前々回 平成30年9月7日にモチベーションマネージメントシリーズ「何故、彼は離職するのか? 」という題でアメリカのウエスタンリザーブ大学の心理学教授ハーツバーグの研究についてお話ししました。
組織で働いている人々は、仕事を通じてどのような欲求を充足しようとしているのか。どのような要因が満足感の源泉(動機つけ要因)であり、どのような要因が不満足の源泉(衛生要因)となるかを明らかにしました。 前々回は、満足感の源泉(動機つけ要因)を紹介しました。今回は、不満足の要因(衛生要因)を紹介します。
衛生要因 =人々に不満を起こさせる要因
次のことは不満の種になり、それが充足されたにしてもモチベーションが高まらないとされています。充足されて当然と感じるのです。逆に充足されないと、不満足感に作用してしまうので注意が必要です。
1. 会社の方針・管理体制
会社の経営方針、管理体制や組織構造などを社員に充分に繰り返し繰り返し説明して、理解を得るように努めることが必要となります。会社の基本となる経営方針を社員が理解しなかったら、モチベーションが高まらないどころか反発してしまうということです。
多くの会社の経営方針は、従業員満足・顧客満足・地域貢献の3つに集約されるようです。
2.監督者との関係
上司との関係がうまくいかないとモチベーションが下がります。社内のコミュニケーション、上司と部下との信頼関係が重要となります。
3.労働条件・給与
労働基準法を守ること(*1)は当然のことです。逆に、守らないとモチベーションは急速に下がります。同様に、給与はある一定レベル(業界での標準や熊本県地域の平均値など)よりも低いとモチベーションの低下になります。逆に、給与が高いことはモチベーションの高揚には単純にはつながらないとも言えます。
(*1)ここでは、労働基準法を守るということは、時間外労働や休日労働の場合には決められた割増率に応じて残業代を支払う、年休は申請したら年休が取れること、解雇権の濫用はしないことを指します。
4. 同僚との関係
監督者との関係と同じく、同僚との関係もうまくいかないとモチベーションは低下します。要点は社内の人間関係を如何にうまくするのかでしょう。そして、結果的には、社員の人間レベルの向上、即ち社員教育・人間教育が必要になると思われます。
5. 個人生活
個人の生活が充足しないとモチベーションは高まりません。朝出勤前に夫婦喧嘩して出社した経験のある人ならわかるでしょう。朝の不愉快さの余波が仕事にも影響を与えるのです。「個人の生活」は、「会社の仕事」があるからこそ成り立っているとの考え方もありますが、必ずしも真ではないと思われます。
個人の生活が充実していてはじめて、会社の業務をモチベーションを持って進めることができるともいえます。会社の仕事と個人生活は、車の両輪と考えます。近年、ワークライフバランスが強調される理由のひとつはここにあると思います。
6.部下との関係
これは、監督者や同僚との関係と同じでしょう。会社は求職のときに選ぶことができますが、上司は選ぶことができません。上司は部下の人生を左右するといってもよいくらいに多大な影響を与えます。パワーハラスメントなどは論外ということです。
7. 身分保障
身分保障のひとつは雇用の安定です。期間の定めのある雇用契約(パートタイマー)では、雇用期間が終わって生活の糧を失うことがわかっているのならばモチベーションは高まらないでしょう。「どうせ辞めるのだから。」 という気持ちが起こります。正社員も同じで会社の売上高が減少していて、身分保障が揺らいでいつリストラにあうのかわからないのであれば、当然モチベーションは下がるでしょう。
以上のことは充足して当然という項目です。充足されないと、逆に不満が急激に増加してしまいます。昨今の求人難では、まず、現在雇用している従業員の離職を防ぐことが第一です。
どうぞ上に記載したことを再度見直してみてください。
平成30年12月26日 コーディネーター 原川 修一
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