人事評価を成果主義や目標管理で行うのは得策ではない

コーディネーターブログ

「あるべき人事評価制度」について、前回(平成31年4月17日)よりお話ししています。

 

前回は、従来の人事評価制度における下記の4つの課題を提示しました。そして①の説明をしました。

① 社員全員を何故S評価にしないのか

② 評価方針は成果主義や目標管理主義でよいのか

③ 評価項目は抽象的なので本人も評価者もわかりにくいと思っている

④ 5年経っても「優秀評価の社員は優秀」で、「普通評価の社員は普通」ならば評価する意味がない

 

今回は②について説明します。

評価方針が成果主義や目標管理主義という意味は、「成果を上げた人を評価します。」あるいは、「目標を設定し、その目標を達成した人を評価します。」という意味です。

 

 

◇ 弊害の多い「成果主義」

成果主義や業績主義などと呼ばれている考え方に基づく人事評価には、次のようなさまざまな危険が潜んでいます。

 

・「社員は個人主義になる」 → 成果を上げた個人を評価しますので、成果以外の会社にとってよいこと、即ち、部下の教育や職場内を協力的な雰囲気にすることなどはおろそかになります。如何に、他の社員を成果で引き離し、相対的に有利に評価されるかが重要になってきます。

 

・「短期の成果しか考えなくなる」 → 評価対象期間は賞与評価であれば半年、昇給であれば1年で、長期的なスパンで成果を見ることがなくなります。1年超えて成果を出すような業務はやらなくなります。

 

・「目標を低く設定して達成度を高くしようとする」 → 目標を達成するために、目標を低く設定するようになります。社員のレベルは下がり、会社のレベルも下がります。

 

・「人材が育たない」 → 成果を上げるためには、社員のレベルを上げる必要がありますが、社員の教育に力を入れても評価されませんので、教育が行われなくなります。新人や経験や実力などの少ない人は益々成果が出なくなります。

 

一方、成果主義そのものが悪であるかの印象を受けますが、原理的に考えて、成果に基づいて評価し、処遇することには異論はないはずです。企業が生き残り、発展するためには成果を出さなければならないのですから。

しかしながら、現在成果主義として導入、運用されている方法は、「個人責任主義」に傾き過ぎていることから、さまざまな欠点が出ています。この個人責任主義を社員個人個人にまで、能力的準備がない人や精神的準備のない人に適用してしまうのは得策ではないと思われます。

 

 

◇ 目標管理と人事評価制度は切り離すこと

目標管理と人事制度、特に評価制度と直結させた場合には、よほど問題の出ないように社員を教育し、準備しておかないとうまくいきません。設定した個人目標を達成したかどうかで評価すると、個人の成果を上げることが至上命題となってしまいます。(個人成果主義)

上で述べたように、個人成果主義においては、個人プレーの蔓延(個人さえよければよい)、低い目標設定をしがちになること、協力性の衰退(従業員どおしの協力がない)などの問題が発生してしまって、結果的にはギクシャクした組織風土と上下の信頼や経営陣と社員間の信頼が無くなってしまいます。

 

 

◇ 組織の意義

もともと会社という組織は、経営方針に共鳴した人たちが、お互いに協力して大きな力をだして行こうとしたものです。その協力することを忘れてしまったかのようです。

企業は組織として、競合他社と競争しています。組織の成果は一人一人の成果を単純合計したものではなく、それ以上の成果が出なくては組織ではありません。個人としての成果を云々するよりも組織としての成果を高めることが第一に重要な課題です。

 

令和元年5月17日  熊本県よろず支援拠点  コーディネーター 原川 修一

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